あなたは、昨夜の夢を思い出していた。
ベッドに入ってから……キラキラと鱗粉を振り撒きながら飛ぶ、不思議な光を見て……私はなんとなく心がザワザワとして、たまらなくなり、ベッドから抜け出したのだ。
部屋着のまま、裸足でこっそりと家を抜け出す。すると、光はちょうど人気のいない影に逃げ込んでしまった。
そこは、滅多に自分も足を踏み入れない路地裏──
しかし、今の自分はなぜかためらうこともなく、ずんずんと入っていけてしまった。
見えない暗闇を手探りで、路地裏を歩いていく。すると、そこには──
見たこともない、美しい川が流れていた。こんな所は近所になかったはずだ。
きょろきょろと見回すと、いつの間にか光が目の前を通り過ぎる。
「ヤア、ヤァ。やっぱり来てくれたんだね」
その光は、小さな人間だった。妖精…フェアリー?
「君は魔法使いの才能がある。光の御使いであるボクを見付けられたんだ、お墨付きだよ」
「君がもし、魔法を使える魔法使いになりたいなら──強く願って」
「約束だよ。その時は、連れて行ってあげるから」
まさか、本当だとは思わなかったのだ。
強く願ってみた。
翌日、こんな手紙が、古風にも封蝋でしっかりと封印されて配達されてきた。
アステル・ローズブレイド…?
どうやら日本人ではないようだが、手紙はしっかりと日本語で書かれていた。
配達先は──「アルカディア魔法学校 星誓学園」。
少しだけ、逡巡する。大丈夫だろうか。聞いたこともない校名だ。
でも──
あの時の、どきどきが、わくわくが、まだこの胸に残っているから。
行こう。
私は、再び強く願った。
そして……
眩い光と共に、光の御使いは現れた。
「ようこそ、魔法使いの卵さん。アルカディア魔法学校 星誓学園へ!」
その声は──間違いなく。
日常から非日常への、幕開けに他ならなかった。
さあ、扉を開こう。
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